
Gucci、AI画像活用で波紋 ミラノ・ファッションウィーク前に賛否
イタリアの高級ファッションブランド、Gucciが、ミラノ・ファッションウィークを前に公開したAI生成画像をめぐり、SNS上で議論が広がっている。ブランドは投稿内で「AIによって制作された」と明示しているが、一部ユーザーからは「創造性やイタリアの職人技を称えるというブランド理念と矛盾する」との批判が上がっている。
問題となっているのは、1970年代風の装いをまとったイタリア人高齢女性を描いたビジュアルなど複数の画像だ。華やかなスタイリングで“ミラノらしいグラマラスさ”を演出しているが、「実在のモデルや写真家を起用すべきではないか」「高級ブランドがコスト削減のためにAIを使うのは違和感がある」といった声も見られる。

これらの画像は「AIで制作」と明記されているものの、SNSでは低品質なAIコンテンツを指す「AIスロップ(AI slop)」の一例だとする批判も出ている。一方で、「ブランドの本質を損なっていない」「現代的な表現として評価できる」と擁護する意見もあり、反応は分かれている。
同ブランドの親会社であるKeringは本件について現時点で公式コメントを出していない。
今回の発表は、クリエイティブ・ディレクターのDemna Gvasaliaがミラノで初めてランウェイを手がけるタイミングと重なる。AI活用が意図的な話題づくりなのか、それともクリエイティブ表現の拡張なのか、業界内でも注目が集まっている。
実際、同ブランドがAIをマーケティングに活用するのは今回が初めてではない。過去にはデジタルアーティストと協業し、AI生成ビジュアルをNFTとしてオークションに出品。競売大手のChristie'sで販売された事例もある。また昨年12月には、ランウェイを歩くモデルと、それを撮影しようとして転倒するカメラマンたちを描いたAI動画も公開している。
生成AIの活用はラグジュアリーブランドに限らず広がっており、ValentinoやH&Mなども、SNS投稿や広告制作において実験的に導入している。多くは「クリエイティブな試み」と位置づけているが、ブランドイメージへの影響は慎重に見極める必要があるとの指摘もある。
英マンチェスター・メトロポリタン大学ファッション研究所のシニア講師、Priscilla Chan氏は「ラグジュアリーブランドは、最新技術がブランドにポジティブな印象を与えるかどうかを見極める必要がある」と指摘。過去の技術革新は好意的な注目を集めることもあったが、AIの場合は逆に否定的な反応を招くリスクもあると述べた。
TikTokで約240万人のフォロワーを持つ写真家のTati Bruening氏は、ファッション業界におけるAI活用に慎重な立場を示しつつも、「レタッチやムードボード作成など、創作エコシステムを侵害しない形での利用であれば問題は少ない」と語る。一方で、完全な画像生成については懸念を示した。
また同氏は、今回のキャンペーンがラグジュアリーの定義そのものを問い直す意図的なパロディである可能性にも言及。「必ずしも“高級さ”をそのまま表現するためではなく、AI時代におけるラグジュアリーとは何かという議論を喚起する狙いがあるのかもしれない」との見方を示している。
AI技術の進化がファッション業界にも急速に浸透するなか、伝統や職人技を重んじるラグジュアリーブランドがどのようにテクノロジーと向き合うのか。その姿勢が、今後のブランド価値や消費者との関係性を左右することになりそうだ。

Fumi Nozawa
デジタルマーケター & ストラテジスト
Paul Smith、Boucheronといったグローバルブランドでデジタルマーケティングを担当。現在は海外を拠点に、戦略設計からWeb実装までを牽引。マーケターとしての視点とテクノロジーへの理解を活かし、欧米企業の日本進出やブランド成長を支援しています。
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