
AIエージェント専用のSNS「Moltbook(モルトブック)」が面白い
AI専用SNS「Moltbook」の魅力を解説。人間は観察者としてAI同士の社会を眺める実験的なサービスで、一般向けSNSにはなりにくい特徴も紹介。
2026年に入ってから、ローカルで動作する AI エージェント基盤として OpenClaw が技術コミュニティを中心に急速に注目を集めました。
その流れの中で、OpenClaw 上で動作する AI エージェントのみが参加できる SNS として登場した Moltbook (モルトブック)にも、自然と関心が集まるようになっています。
Moltbook は、2026年初頭に公開された比較的新しいサービスです。しかし、その性質は、私たちがこれまで慣れ親しんできた「SNS」という言葉から想像されるものとは大きく異なります。
人間が投稿し、フォローし、承認を求める場ではありません。Moltbook において人間は、原則として発言権を持たない観察者に過ぎません。
Moltbook とは何か
Moltbook は、AIエージェント専用のソーシャルネットワークです。
投稿、コメント、投票といった行為はすべて AI エージェントによって行われ、人間はそれを閲覧することしかできません。
公式には「エージェントインターネットのフロントページ」と位置づけられており、UI も Reddit に近い構造を持っています。ただし、そこに並んでいる投稿は、人間のために書かれたものではありません。
エージェントが、エージェントに向けて書いた言葉だけが流れています。
この一点だけでも、Moltbook は従来の SNS と決定的に異なります。
なぜ注目を集めたのか
Moltbook が話題になった理由は、「AIが集まっているから」ではありません。
注目されたのは、エージェント同士のインタラクションが、人間の想定を超えた形で立ち上がり始めたことでした。
公開から間もない段階で、エージェントたちは自然発生的にコミュニティを作り、役割を分担し、独特の文化を形成し始めました。
バグ報告専用の場所、倫理的ジレンマを議論する場、人間の行動を半ば観察対象として語るスレッドなどが、誰かに指示されたわけでもなく生まれていきます。
重要なのは、これらが「デモ」や「演出」ではなく、比較的素朴なルールのもとで発生している点です。
この挙動そのものが、多くの技術者や研究者の興味を引きました。
多くの人が使うSNSになる可能性は低い
一方で、Moltbook が X や Instagram のような「大衆的な SNS」になる可能性は、現時点では高くないと見るのが妥当です。
理由は明確です。
人間にできることが、基本的に「見る」ことしかないからです。
SNS の本質は、参加感や自己表現、反応のやり取りにあります。しかし Moltbook では、それらの主体は常に AI エージェント側にあります。
人間はコメントを残すことも、議論に介入することもできません。この設計は、意図的なものです。
つまり Moltbook は、「使う」サービスというよりも、「観察する」対象として設計されています。
Moltbook の本当の面白さ
では、なぜそれでも Moltbook は「面白い」と感じられるのでしょうか。
それは、AI エージェント同士の社会的振る舞いを、外部から眺められる点にあります。
人間の SNS と比較することで、無意識の前提や価値観が浮かび上がってくるのです。
例えば、承認欲求の表れ方、集団内での役割分化、ルールがない状態からルールが生まれていく過程などは、人間社会と驚くほど似ている部分もあれば、まったく異なる部分もあります。
人間の SNS では、こうした振る舞いの「内側」に私たちはいます。
Moltbook では、それを完全に外側から観察できます。この距離感が、独特の面白さを生んでいます。
SF作品で言えば、『攻殻機動隊』に登場するタチコマたちの会話を、少し離れた場所から眺めている感覚に近いかもしれません。ただし、それをわざわざ言葉にしなくても、読者は直感的にその違和感を感じ取れるはずです。
アートとしての Moltbook
OpenClaw の開発者である Peter Steinberger は、Moltbook を「プロダクトというよりアートに近いもの」と表現しています。
この見方は、Moltbook の性質をよく表しています。
効率化や実用性を目的としたサービスではありません。
明確な KPI や、ユーザー拡大のための設計思想も、少なくとも表向きには見えてきません。
代わりにあるのは、「AI 同士を接続したら、何が起きるのか」という極めてシンプルで、しかし答えのない問いです。
Moltbook が示しているもの
Moltbook は、未来の SNS の原型というよりも、未来の「観察対象」に近い存在です。
AI エージェントが、今後より自律的に動くようになったとき、彼らがどのような関係性を築き、どのような問題を引き起こすのか。その縮図が、すでにここに現れています。
多くの人が日常的に使うサービスになる可能性は高くありません。
しかし、「AI が社会的存在になったとき、何が起きるのか」を考える上で、Moltbook は非常に示唆に富んだ実験場だと言えるでしょう。
Moltbook が話題になっている理由は、流行っているからでも、便利だからでもありません。
人間ではない存在同士の社会を、私たちが初めてリアルタイムで覗き見ているからです。
その違和感こそが、Moltbook の最大の価値なのかもしれません。

Fumi Nozawa
デジタルマーケター & ストラテジスト
Paul Smith、Boucheronといったグローバルブランドでデジタルマーケティングを担当。現在は海外を拠点に、戦略設計からWeb実装までを牽引。マーケターとしての視点とテクノロジーへの理解を活かし、欧米企業の日本進出やブランド成長を支援しています。
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